4Kマルチカム編集におけるメモリの重要性

4Kマルチカム編集においてメモリはCPUと同じ位、場合によってはCPU以上に重要になります。しかし、メモリのスペックと言いますと通常は搭載量を想像するかと思います。動画編集を生業とされる方はそれなりにメモリ量を搭載したPCをご用意されているので「大丈夫」と思っている方も多いですが、果たして本当にそうでしょうか?

恐らく多くのお客様のPCは見かけ上のスペックは高くてもマルチカム編集に向かない構成なのが事実です。

それは4Kマルチカム編集において重要なのはメモリの量ではなくメモリの帯域になるからです。恐らく殆どのお客様のお使いの動画編集機はデュアルチャンネルでメモリが構成されております。しかしながらこのデュアルチャンネルでは4Kマルチカム編集時にメモリ帯域がたりなくなってしまいます。そこでメモリ帯域の問題を解決するにはクアッドチャンネルで構成する必要があるのです。

イメージの話になりますがデュアルチャンネルとは2車線の高速道路に例えられます。そしてクアッドチャンネルは4車線の高速道路になります。渋滞が起きてない高速道路では2車線だろうが4車線だろうが制限速度で走った場合、理屈的には同じ時間で目的地に到着します。しかし、2車線だったら渋滞するけど4車線だったら渋滞しないという混雑具合ならどうでしょうか?間違いなく4車線の高速道路の方が目的地に早く到着できます。

下記はデュアルチャンネル及びクアッドチャンネルで構成されたSONYの業務用フォーマット(XAVC Intra)におけるCPU,メモリ,グラフィックボードの使用率になります。

マシン環境: CPU=Intel Core i9 10980XE, メモリ=DDR4 3200MHz , グラフィック=RTX3060

テストファイル:XAVC Intra=解像度3840x2160, フレームレート60i, カラーサンプリング 4:2:2, 深度10bit, ビットレート 300Mbps, 拡張子 .mxf

テストソフト: EDIUS X pro

ドラフトプレビュー: OFF

デュアルチャンネル構成の場合

4Kマルチカム台数 CPU使用率 メモリ使用量 GPU使用率 備考
1台 39% 6.4GB 44% 編集に問題なし
2台 76% 6.6GB 44% 編集に問題なし
3台 100% 6.8GB 45% コマ落ちあり、編集はどうにか可能
4台 100% 6.7GB 44% 編集不可状態

クアッドチャンネル構成の場合

4Kマルチカム台数 CPU使用率 メモリ使用量 GPU使用率 備考
1台 35% 7.0GB 42% 編集に問題なし
2台 55% 7.0GB 39% 編集に問題なし
3台 73% 8.0GB 44% 編集に問題なし
4台 95% 8.1GB 44% 編集に問題なし

 

上記を比べていただけるとわかるのですがカメラ台数が増えてもメモリ使用量、GPU使用率は殆ど横ばいです。しかしながらデュアルチャンネル構成ではカメラ台数3台目においてCPUの使用率が100%に達してコマ落ちが始まり、4台目では編集不可能状態に陥ります。

対してクアッドチャンネル構成の場合はCPUの使用率は73%、4台目においても95%となます。CPUは同じ物なのにデュアルチャンネル時では100%になったのがクアッドチャンネルでは負荷が低下しております。何故にこのような事が起こるかというとCPUに対するメモリの情報受け渡しがオーバーフローしているからなのですがWindowsのタスクマネージャー(リソースモニター)上では実はメモリの帯域不足はCPUの能力不足としているからなのです。

なお、5台目のカメラになるとクアッドチャンネルでもCPUの使用率は100%に達して編集はどうにか出来る物のコマ落ちがある状況になります。クアッドチャンネル時にはカメラが1台増えるにしたがってメモリ帯域に余裕がある状況でも約20%CPU使用率があがっている状況から想像するにCore i9 10980XEというパワフルなCPUでも5台目で恐らく115%ほどCPU側の処理能力がたりない事が容易に想像可能です。

ただし、メモリのクアッドチャンネル構成は多くのCPU、マザーボードでサポートしておりません。一般のCPUではメモリ枚数を2枚から4枚に増やしても容量が増えるだけとなります。また、メモリ増設の際にはメモリRANK数や動作電圧に注意が必要になり基本的に同一製品、同一ロットが推奨されます。場合によってはデュアルチャンネルだったのがシングルチャンネル動作になりより低速になってしまう場合がございますのでご自分で増設を考えてる方はご注意ください。

現在ご使用中のPCがデュアルチャンネルかクアッドチャンネルかはCPUZ(https://www.cpuid.com/softwares/cpu-z.html)というフリーソフトが非常に便利ですのでご興味のある方はダウンロードしてみてください。