高速かつ高効率な編集環境は各企業、個人によって異なります。闇雲に編集機材をスペックアップするのでなくお客様にとって最適な編集環境がどの方式を採用するべきかを選定した後に環境にあった機材を導入することにより無駄な投資なく最適な編集環境を整える事が可能となります。

まずは下記のチャートよりお客様に最適な編集環境を選択し、それぞれの編集環境のご説明をご参照ください。

 

 

クラウド編集

もっとも自由度の高い編集環境であるのが特徴です。インターネットにあるクラウドサーバーに編集素材やプロジェクトファイルが置かれることにより「何時でも、何処でも」編集が可能となります。また、多人数による素材共有や渡り編集も得意とするところであり契約外部編集者や在宅編集者がいらっしゃる環境にも柔軟に対応できます。また、クラウド上で地理的に違う場所でバックアップを行っているので災害に非常に強いのが特徴です。

非常にすぐれたクラウド編集環境ですが心配されるのが「通信・編集速度」と「ランニングコスト」となります。編集速度は基本通信速度に依存するので編集場所が重要になります。特に2021年~2022年2月現在より在宅勤務者が増えたことにより住宅街における通信速度の低下が散見されます。場合によっては編集では使い物にならない位の速度に低下することも考えられます。

この解決には編集機を仮想PC化し、編集場所には完全にシンクライアントから操作するということでかなり高速化は可能です。ただ、これにもいくつか問題があります。まずは現在ご使用の編集ソフトがクラウド上で動作するか?またはライセンス上で違反にならないかということがあります。クラウド上につくる仮想PCは通常はピュアなWindowsがインストールできない場合があります。有名なAMAZONのクラウド(AWS)の仮想PC(EC2)はWindows Serverベースであり通常お使いのWindowsとは少々異なるシステムになります。Windows Serverでの動作を保証した編集ソフトは少ないのが現状です。

もう一つの問題がランニングコストになります。クラウドにデータを保存し編集する場合はクラウドとのデータをやり取りする必要が当然あります。クラウドのデータ料金は基本的に「データ保管料金」と「データ取り出し料金」となります。これに仮想PCを立てる場合は「仮想PCの使用料金」もかかります。さらにクラウド自体の操作も煩雑な事もあり編集者が兼任して行うのは通常は不可能で別途専任エンジニアを雇用する必要があります。この辺りを考慮すると現状では大手企業がクラウドサービス業者と包括契約を結んで行うことが現実的であり、一般企業が行うには中々にハードルが高い物があります。

 

共有編集(映像編集用NAS)

映像編集用に設定されたNASを使い閉じられたネットワーク内で渡り編集や素材共有したい場合にもっとも適したシステムになります。10GbE対応NASやスイッチ(ハブ)を使うことにより4K編集にも対応する事が可能です。また、現在お手持ちの編集機接続する事が可能なため使い慣れた編集環境をそのまま移行出来る事も魅力です。また、ネットワークはあくまで社内なのでインターネット速度より圧倒的に速いのが通常です。

これまで映像編集用サーバーにはSAN(Storage Area Network)での接続が一般的でした。この場合、専用の光回線ネットワークを組む必要があり導入、運用時に高度なスキル・知識が必要なので専任の担当者を置くのが一般的で、また各種機材の価格も非常に高価格なため導入コストが数百万~数千万単位+専任エンジニア費用となり中小企業では導入をあきらめざる得ないが殆どでした。しかしながらNASシステムでは従来のLAN回線をそのまま使う事も可能です。(10GbE接続にはCAT6A以上のケーブルが必要です。)さらに各種機材の価格もSANに比べて安価であり運用に特に専任のエンジニアが不要なため十万~数百万と圧倒的低コストで導入可能です。また、SANと違い比較的簡単にVPN(仮想専用線)でネットワークを構成できますので在宅勤務者の利用も可能です。(VPN接続の場合はクラウドと同じくネットワーク速度が編集環境に及ぼす影響を考慮する必要があります。)

ただし、クラウド編集より災害に弱いのは否めません。NASをRAID化、電源のリダンダント化(HDDや電源の冗長化)等の対策を行ったとしても基本的にデータが一か所にあるということが理由です。仮に落雷があった場合や火災が起きた場合はデータを失ってしまう可能性があることを理解する必要があります。(バックアップ用NASを遠隔地に置く等の災害対策を推奨しております。)また、予め保存する「データの最大容量」を想定してハードウェア構成する必要があります。

スタンドアローン編集

総てを1人で編集するスタンドアローンでの編集では編集機のスペックをあげる事が最も重要になります。これは単順にCPUのスペックアップやメモリの増設も含まれますがお使いの編集ソフトや使用する機能により無駄になスペックアップをされてるお客様が散見されます。

また、スタンドアローン編集で外部ストレージ(DAS,USB接続外付けHDD等)をご利用するかたも多くいらっしゃいますが、この部分の速度が遅いために折角、編集機の性能をアップさせたのにその恩恵を受けられないお客様が大変多くいらっしゃいます。特に4K編集になりますと高速な内部外部を問わずストレージが必須となります。

内部ストレージではNVMe SSDと呼ばれる従来のSSDより高速なSSDの増設、外部ではUSB3.2 Gen2接続やThunderbolt接続のストレージがお勧めとなります。